No.8, p.3 2001年4月


第8回おかやまホスピス市民講座
(緩和医療研究会第29回研究集会・講演会と共催)
平成12(2000)年11月19日
於:三光荘パブリゾン(岡山県職員会館)

The Team Approach in Palliative Care
Angela Egdell, Patients Services Manager
Deborah Heron, Personal Manager
St. Oswald's Hospice, Newcastle upon Tyne, U.K.

緩和ケアにおけるチームアプローチ
 ―英国の緩和ケア施設での実践に学ぶ―



 アンジェラ・エグデルさん(写真左)
  患者サービスマネジャー
 デボラ・ヘロンさん(写真中央)
  人材開発部長

 セントオズワルドホスピス
 (英国ニューカッスル市)


 座長:加藤恒夫 かとう内科並木通り病院
 通訳:小笠原ヒロ子


司会(加藤) つづきまして,セントオズワルドホスピスで人材開発部長をお務めのデボラ・ヘロンさんに講演していただきます。ヘロンさんの経歴のご紹介は,ヘロンさんご自身に語っていただましょう。そのほうが,人材開発部長(Personal Manager)あるいはボランティアコーディネーターの立場が明確になると思いますので。
 ではヘロンさん,よろしくお願いします。



医療チームとボランティアとの関わりについて

Deborah Heron(デボラ・ヘロン)
英国セントオズワルドホスピス,人材開発部長


デボラ・ヘロン 私たちの今回の岡山でのテーマは,「緩和ケアにおけるチームアプローチ」ですが,私は,ボランティアとの関係でこのテーマを探りたいと思います。
 先ほどのエグデルの講演の最後でも触れられていましたが,私どもセントオズワルドホスピスには,ケアチームの一員として多くのボランティアが加わっています。そうしたボランティアの役割,つまり,専門職や,患者さん,ご家族とどのように関わり,つき合っていけるのかについて,お話していきます。とくに慈善団体により運営されている組織としてのホスピス(ボランティアホスピス)というものについて考え,それから,慈善団体のシステムとしてのホスピスを確立していくプロセスをざっとお話して,そのシステムをどのように維持していくかについて,みていきます。
 まず,慈善団体が運営する組織としてのホスピスとはどういうものかについてですが,英国における歴史を振り返ってみます。とくに,慈善団体の組織がどのように職業化していったか,その影響についてと,それから,政府の影響力が大きくなっていることについて,触れます。それから,これらの要素が,雇用スタッフとボランティアを含む組織にどのような緊張を生じさせているか,続いて,スタッフとボランティアとのチームアプローチを奨励していくために,セントオズワルドが,ボランティアプログラムの管理にどのように取り組み,それによって緊張がいかに小さくなっているのかをお話します。

(1) ボランティアコーディネーターになった経緯

 私は,セントオズワルドホスピスで仕事を始める前に,ロンドンにあるVSO(ボランティア海外派遣)で仕事をしていました。VSOはボランティアを派遣する機関でして,開発途上国で働くボランティアを募集し,訓練し,派遣する事業をしています。私は選考部長で,海外に派遣するボランティアの候補者の評価に関わっていました。ボランティアを選抜する人が300名いまして,この人たちがこの評価をするわけですが,その評価をする人たちの募集,訓練,サポートにも関わっていました。
 VSOでの仕事の経験によって,私は,ボランティアの人たちはどういう動機でボランティアをしているのか,ボランティアの役割をきちんとこなすにはどういう資質が必要か,ボランティアが組織の中にうまく入れるようになるためにはどういうシステムが必要なのかを,よく理解できるようになりました。

人材開発部長の役割の概要
 1998年5月,私はセントオズワルドホスピスで,ボランティアコーディネーターとして仕事を始めました。私の前任者は,ホスピス開設以来務めていた人でした。私の役割はまず,ボランティアプログラムの管理,とくにボランティアを募集し,配置し,サポートすることでしたが,ホスピス内でボランティアの新しい役割が発生した場合に,これを創りあげていくこともしました。
 2000年9月になって,私は人材開発部長になり,スタッフとボランティアの人事の責任者になりました。その仕事は,エグデルが務める患者サービスマネージャーをはじめとした各部門〔149ページのセントオズワルドの組織構成を参照〕のマネージャーをサポートして,すべてのスタッフの募集,選考,管理,人材開発を行なうことです。それ以外の役割としては,スタッフとボランティアがホスピスのチームとしてまとまるよう働きかけること,スタッフもボランティアもともにやりがいがある役割を育てていくこと,組織のキャパシティ(受容能力)を増大させて,来るべき変化や難題に柔軟に対応できるようにすることがあります。
 私はまた,ホスピスボランティアコーディネーター協会(AHVSC)のイングランド北東地方の代表も務めています。この協会は設立されてから10年経ちますが,ホスピスでボランティアの仕事をコーディネートするメンバーに対して,サポート,ネットワーキング,人材開発の機会を提供しようという団体です。

セントオズワルドホスピスについて
 昨年,私どもの緩和医療専門医であるレナード医師が岡山を訪問しましたが,その際にセントオズワルドホスピスの概要やサービスの内容について,みなさまにご紹介したと聞いておりますし,先にエグデルも若干述べておりましたので,私からは,私の仕事に関わる範囲で少しだけ補足しておきます。
 セントオズワルドホスピスは英国で独立型といわれるホスピスであり,イングランド北東地方の人たちにspecialist palliative care(スペシャリスト緩和ケア)を提供しています。私どもの母体は慈善団体で,資金の70%が有志の寄付金によるものです。残りは地元のNHSトラストから,つまり中央政府から提供されています。ということは,私どもは,患者さんに無料でケアを提供できるということで,この点が,私どものホスピスの思想の重要な部分です。
 私たちのサービス内容をかいつまんで申しますと,15床の入院病棟,1週間に1回の割合で患者さんがいらっしゃるデイホスピス,患者さんが特別の集中治療を受けるデイトリートメントがあり,デイトリートメントを利用する患者さんの7割はリンパ浮腫です。また外来診療クリニックがあります。また,私どもの専門医と医師は,在宅ケアや地元の病院へ往診にも行っています。

(2) 英国におけるボランティア組織の歴史

 必ずしも全部ではありませんが,英国において,人間にかかわるサービス活動は,1人あるいは小規模のグループによるボランティアによって始められました。中央政府によっては叶えられなかった,身近な社会におけるニーズを把握したためです。この創始者たちは,そうしたニーズに応えようと,自分たちの時間とエネルギーを注ぐ意欲満々の人たちでした。
 たとえば,英国の警察というものは,19世紀にボランティア組織で始まったもので,今日でさえ,英国警察の中には特別警察官(SC)というものがあって,ボランティアとして働いています。同様に,教育制度も教会によって始められたもので,それまでは,ほんの一握りの特権階級のものでしたが,すべての人に基礎教育を提供する学校は,教会によって設立されました。また,看護も一人の個人が始めたもので,それは,かのフローレンス・ナイチンゲールです。
 さて,英国のホスピス運動は,“Dame”の称号〔男性への称号“Sir”に相当〕を授与されたシシリー・ソンダースさんが一人でボランティアで始めたものです。ソンダースさんは,予命わずかな病気の人のケアの必要性を見出した方で,それまではケアは,ほとんど提供されていませんでした。とくに,QOLは考慮されていませんでした。
 同様にセントオズワルドホスピスも,ドロシー・ジェームスさんという女性を中心とした小規模のグループの人たちによって設立されました。この方は同じように,イングランド北東地方にホスピスケアの必要性を見出された方です。

ボランティアとスタッフ
こうしてボランティアによって始められたそれぞれの組織は,時間がたつなかで,組織におけるボランティアの割合とスタッフの割合が変わっていきました。仕事がどんどん「専門的」になっていきましたが,これは,ボランティアがふつうは専門的でないというのではありません。サービスが確立するようになり,サービスに対する需要が増えるにしたがって,仕事を長い時間するスタッフが必要になり,往々にして常勤スタッフが求められるようになるというだけのことです。それは同時に,サービスを提供するための知識や技能も発展させ,この専門的知識や技能を取得するための予備訓練の中で,さらなる知識や技能が求められるようになってきました。
 その一方,これら2つのことから,ボランティアとして仕事にあまり魅力を感じなくなったり,仕事の求めにあまり応じることが少なくなったりする事態も生じました。サービスがうまく確立されている場合には,ボランティアの参加理由全体が変化し,ボランティアが関わるために納得のいく理由が新たに出てこない限り,ボランティアは撤退してしまうというわけです。組織観や動機の違いから,スタッフとボランティアの間に一種の緊張関係を生むことも考えられるでしょう。スタッフとボランティア同士が,お互いを,組織が効率よく動くことを妨げるものとして見るようになるということです。

国家の役割の増大
 もう一つ,慈善団体における国家の役割が,時とともに大きくなっているのも,大きな変化です。イギリスでは,警察,教育,保険・医療のすべてに対して,政府の関与が強まっています。慈善団体は,慈善法により,国家と資金提供者に対して説明する責任が大きくなっているのです。
 しかし極く最近になって,医療分野では振り子が逆に振れる事態となっています。たとえば最近は,政府と慈善団体部門の間で協定ないし取り決めが行なわれる事態になっており,いわゆる提携した第三セクター方式での寄与が重要であると認識されるようになっています。この協定が,ボランティアの関わり方や役割や責任の手引きになっています。これに加えて,トニー・ブレア首相は,個人的にボランティア活動をサポートするとして,西暦2000年度を通じてボランティア活動を促進するための新たな資金提供を行なっています。
 このように,ボランティアの関与へと振り子が揺り戻されている理由は,複雑です。たとえば,財政面の理由もその一つです。さして重要とはみなされていないのですが,ボランティアがいなければ,第三セクター方式によるサービスのある局面が大幅にレベル低下するか,カットされてしまうからという理由もあります。また,そうした第三セクター方式の組織が,現にサービスを行なっている地域社会から孤立化しつつあるという指摘があり,第三セクター方式においても,ボランティアの関与がサービスの本来のひとつのあり方であるとの見方も大きくなっています。
 ホスピスケアに関しては,英国では依然としてホスピスの独立性を強力に維持していこうという運動が続けられる一方で,NHSと提携して,より協調したサービスを展開していこうという動きもあります。このことと,国民的に合意された「緩和ケアにおけるスタンダード(規準)」を育成する方向への動きがあることは,要するに,独立型のホスピスは,緩和ケアの中で,自分たちの将来の役割と,ボランティアプログラムへ潜在的に与えている影響について,よく考えなければならない可能性が高くなっているということです。

(3) セントオズワルドにおけるスタッフとボランティアの関係

 現在,セントオズワルドホスピスにおけるボランティアとスタッフの割合は,6対1ですが,今述べたような変化が,セントオズワルドにどんな影響を与えるかを見ていきましょう。
 セントオズワルドホスピスにおけるボランティアとスタッフの関係はとても良好ですが,14年前に開設された当初に比べると,ボランティアの役割は大きく変わってきており,緊張も少しはあります。ホスピスは,資格を持った看護婦や医師だけでなく,少数ですが,事務管理スタッフをつねに雇用してきました。しかし,時代とともに,専門職の雇用スタッフの数が増えてきました。その結果,長く定着しているボランティアの人たちは,ホスピスが変わってしまい,自分たちが最初のころとは非常に違ってきたと感じていますが,どうしてそういう変化が起きたのかを,必ずしも理解できていません。ボランティアのひとりは,「私たちができることなのに,なぜスタッフにお金を支払うの?」と見ています。スタッフの中にも,小数ですが,これまでボランティアと仕事をした経験のない人が,ボランティアが関わる理由を十分理解できなかったり,評価しなかったりする人がつねにおります。
 雇用スタッフとボランティアのバランスをきちんと保つことは,これまでも決してかんたんなものではありませんでしたし,このバランスに影響を及ぼす要素のすべてを,必ずしもセントオズワルドホスピスの管理下におけないこともはっきりしています。しかし,セントオズワルドには,ボランティアの関与に影響を及ぼす内外からの圧力を認識すること,また,ボランティアプログラムを引き続き成功させることの両方に責任があります。

人材開発部長の役割
 私は人材開発部長として,これらの緊張に対処していく責任があります。これに関連して鍵になる仕事を,以下ご紹介していきます。
 第1に,人材の開発とその手段を考え出し,それによってセントオズワルドホスピスが目指すものを実現できるようにすることです。この中には,ホスピスのボランティアポリシー(ホスピスがどのようなボランティアを採用したいと考えているか)を考案することもあります。
 あとでもう少し詳しく述べますが,私は,ボランティアを関与させることに対するホスピスの取り組み方と,関与するみんなにとってボランティア活動がプラスになり,サービスの利用者,すなわち患者さんとご家族に最大限のプラスになるよう開発された手続きを開発しました。
 第2に,スタッフおよびボランティアの募集、選考、配置を調整します。ボランティアを活用するために,機能を一点に集中させることで,ボランティアとしてサービスを提供する誰もが,自分たちのニーズとホスピスのニーズに最も合致した役割への配置が可能になるのです。スタッフもそうですが,とくにボランティアは,自分たちがどうしてそこにいるのか,その意味を見出せないとなると,即座に問題が発生して,たいていの場合,ボランティアは辞めていってしまいます。
 第3に,ボランティアの準備,訓練,支援,育成を調整します。ボランティアの人たちに対して,ホスピスの考え方や文化などを紹介し,割り当てられた仕事あるいは役割を適切に引き受けられるようになるためのオリエンテーションをするというのは,非常に重要です。
 第4に,日々のボランティアの人員配置が,方針に沿って順調にいくように,スタッフを支援します。セントオズワルドホスピスのスタッフはだれもが,ボランティアと一緒にどのように仕事をするかについて,必ずしも知識や経験があるわけではありません。スタッフは,ボランティアの人の動機や,ボランティアの人が役割を果たせるのに,どんな指導やサポートが必要であるかも,必ずしもつねにわかっているわけではありません。機能を一点に集中させることで,こうした知識や技能を利用できるようになります。
 第5に,ボランティアの人たちの管理をきちんとやっていく上で大事なことの一つが,スタッフとボランティアのチームワークがうまくいくように働きかけながら、ボランティアと仕事をする各部門のマネージャーをサポートすることです。これにより,患者さんにサービスを提供する際に,自分自身は貢献しているのだという意識がチームのみんなの中に育ちます。

セントオズワルドはなぜボランティアを使い続けるのか
 私たちのボランティア戦略の出発点は,この問いを持ち続けることです。昨年のことですが,ホスピスのすべての部署のスタッフやボランティアに集まってもらい,この質問をしたところ,みんなの答えから,これからもボランティアに関与してもらうことが重要だとわかりました。
 その理由として第1に,良質のサービスを提供する際にホスピスの資源を最大限に利用するためというのがあげられました。ついで第2に,将来のサービスの展開に,とくに新規の児童のサービスに関する計画に,地域社会が関わってもらえるようにするため。第3に,ホスピスの仕事について建設的批判的意見を得られるため。第4に,ホスピスの仕事を語り伝える大使を育てるため。第5に,地域住民がホスピスでの経験を得て,新しい社会関係を育み,自分たちの社会にお返しをすることから満足を得る機会を提供する一方で,住民自らの技術と能力に基づいて貢献してもらえるためという,5つが挙げられました。

基本方針
 セントオズワルドがボランティアを関与させたい理由をはっきりさせる過程で,ボランティアの募集と配置について,多くの基本方針が出てきました。この基本方針は,私たちの根本にある信念を思い起こさせます。その信念とは,ボランティアの経験を,ホスピスとボランティアにとって最大のものにしていく最善のやり方は,スタッフとボランティアがチームで力を合わせられるようにすることであり,みんなが,チーム内の自分自身の役割と他人の貢献をしっかりと認識していることだというものです。
 その基本方針とは,具体的には以下に掲げるものです。第1に,セントオズワルドホスピスは,それが現実的でぴったりであれば,ボランティアを,チームの平等な一員と考え,スタッフと同じようにボランティアを懸命に監督・支援します。
 第2に,セントオズワルドホスピスは,スタッフとボランティアの誰もが各人の貢献を尊重し,いろいろなやり方で活動してもらいたいと考えます。このあり方は,基本方針にはね返ります。
 第3に,セントオズワルドは,ボランティアが,それぞれに割り当てられた役割に専念し,それを遂行できる能力を持ち,チームの一員として責任を果たしてもらいたいと考えます。
 第4に,セントオズワルドホスピスは,ボランティアの人たちに対して,どんな役割なのか,カバーすべき範囲は何か,誰に報告するかについて教えます。
 第5に,セントオズワルドは,ボランティアが役割を果たせるように,訓練をし,支援し,仕事ぶりの評価を伝えるようにします。
 第6に,セントオズワルドホスピスは,組織内に新しい事態が起きた場合には,その都度会合を持ったりスタッフへ事実関係を説明したりして,各部門のマネージャーや刊行物を通じて,事態の進展についてボランティアに継続的に知らせるようにします。

ボランティア募集のポリシー
 ボランティアの人たちは,口コミ,新聞広告,PR活動,地域のボランティア事務局との連携,地元の機関や学校といった,さまざまな情報源から募集されます。
 これまでは,医療を学びたいと考えている学生や年配の女性がボランティアになる傾向がありました。もちろん,そういう人たちも歓迎しますが,普通はボランティアをしないような人たちにも,どんどん応募してもらいたいと考えています。
 例えば,男性やいろいろな民族の人たちにも応募してもらいたいのです。そういう方に関わってもらうことによって,私どものサービスに対していろいろな意見が寄せられるようになり,ホスピスが対象とする,地域社会の人口構成の実態に少しでも近づけられるようになると確信しているからです。

ボランティアの審査基準
 ボランティアプログラムの非常に重要なひとつの側面として,サービスを提供している人は,応募分野のバランスを反映しているかどうか,応募の実態に即しているかどうかを,きちんと評価されるようにすることが挙げられます。
 セントオズワルドホスピスでボランティアになりたいという問い合わせがありますと,応募用紙に記入してもらい,身元保証人を2人たててもらい,1回の面接に臨んでもらいます。私たちとしては,応募してくれた人にはできるだけボランティアになってもらいたいと思っていますが,実際に仕事をしてもらうからには,ある程度の審査基準を満たしてもらわねばなりません。
 そして面接のときに私たちが重視するのは,これまでにセントオズワルドホスピスに係わり合いがあるのかどうか,ボランティア活動に参加したことがあるのかどうか,時間があるか,健康かどうか,これまでに離別の経験があるのかどうかをみていきます。離別の経験があっても,それが過去1年以内のご家族である場合は,採用を見合わせたほうがいいと考えています。ただ,個別の事情も見つつ,応募は考慮しています。
 私どものところで採用できないときは,セントオズワルド以外の場所か他のホスピスを紹介しています。それから,空いているポストにふさわしいかどうかも考慮します。
 ボランティアの人たちには,応募書類の守秘義務の条項に署名してもらうこともします。患者さんやホスピスに関して知り得た情報について,他には漏らさないようにしてもらうわけです。ただ,これが実際にはどう行なわれているかは,ボランティアが働く部署によって異なります。

任務内容説明書
 私たちは,ボランティアの人たちが仕事になじめるようにするために,どんなことをしなければならないかを記した任務内容説明書を作りました。スタッフの職務内容説明書と同様のものです。内容説明書には,日々の仕事の中で,だれの下で働き,だれに報告し,だれからサポートを受けるのかなどが説明されています。
 ボランティアの人たちの役割が何のためにあるのか,働く時間も記してありますし,重要な仕事の場合はその内容がもっと細かくわかるようにもなっています。ボランティアには,どんな資質が求められているのかもわかります。例えば,信頼できる人,忍耐強い人,チームの一員として仕事ができる人などの資質が求められています。

オリエンテーション
 ボランティアは全員,オリエンテーションを受けることになっています。これは2つのパートに分かれています。
 最初のパートは実際面のことで,一緒に仕事をすることになるチームの紹介と役割の紹介です。これは,ボランティアが配属される職場の担当部門のマネージャーがやることになっています。OJTすなわち現場での実習,セントオズワルドホスピスの仕事全般の紹介,チームのまとめ役がいる場合には,その人に報告することになるのですが,その人の紹介,ホスピス内のキーパーソンの紹介,役割の守備範囲については,部門のマネジャーから説明を受けます。これらは非常に重要なポイントで,資格や認定訓練が必要な仕事にはボランティアの人たちを就かせないようにさせるためです。
 配属先の部門のマネジャーは,ホスピス内の安全衛生の基本ルールについても説明し,仕事をするに際して必要であれば,その訓練の手配もします。例えば,病棟ヘルパーの場合でしたら,食品衛生に関する訓練が必要になります。
 オリエンテーションの第2のパートは,ホスピスで仕事をし始めてから4カ月以内に,研修講座に参加してもらうことです。この講座はボランティアとスタッフのためにあり,ホスピスで働いている他の人とも会える機会になっています。これは,いつもの仕事では普通は会うことのないスタッフや,他の日に来ている人たちとも会えるので,1週間に1回しか来ないボランティアの人にとっては,極めて有効なものです。
講座は,ホスピスの考え方についての講義,緩和ケアについての講義,離別ケアとスピリチュアリティについての講義,チームワーキングについての講義の4つです。

ボランティア契約書
 ボランティアの人たちが仕事をし始めて4週間経った時点で,「ボランティアアグリーメント」という契約書を送り,それを読んでもらって,納得してもらえばサインをもらいます。この契約書には,法的拘束力はありませんが,ボランティアとしてどういう責任があるのか,セントオズワルドホスピスはどういう責任があるのかが,明確にされています。
 ボランティアの側の義務としては,自分を当てにしていい,あるいは信頼できる人間であると宣言すること,他のボランティアやスタッフの貢献を尊重すること,自分の役割に必要な研修には参加することです。ホスピスの側の責任としては,ボランティアを訓練し支援し指導すること,歓迎し,チームの一員であることを実感できる環境をつくることです。
 この段階で契約書を発行することは有用だと考えています。それは,自分がほんとうにボランティアをやりたいのかを考えるのに時間が必要だからであり,もしやりたくないということになれば,本格化する前に辞めることができるからです。さらに,契約書を交わしてから後にボランティアの仕事ぶりに問題がある場合には,この契約書が役に立つことがあります。
 ボランティア契約書に加えて,すべてのボランティアには6カ月間の見習い期間があります。その見習い期間が終わったところで担当部門のマネジャーが評価(レビュー)を行ないます。ボランティアあるいはマネージャーのいずれかが仕事を続ける気持ちがない場合には,役割の変更ということになります。
 セントオズワルドホスピスでは,ポリシーと手続きを,できれば,スタッフとボランティアに同じように適用していきたいと考えています。イギリスには雇用法があって,スタッフに対する処罰はボランティアに適用されません。しかし,ボランティアがボランティアにふさわしい行動をすることは大事で,ボランティアがホスピスのルールを破ったときは,必要であればボランティアに対して叱責または戒告処分を行ないます。
 しかし私どもとしては,たとえそういう問題が発生しても,すぐにボランティアにこちらの意見を伝えて,できるだけそういう厳しい処分には至らないようにしているので,実際には処分をしたり契約を解除したりするということは,ほとんどありません。
 また,ボランティアの人がホスピスから公正に扱われていると感じてもらうことも重要です。不公正に扱われている,あるいは,ホスピスのやっていることは患者さんの最善の利益に反しているとボランティアが感じたときは,その苦情をホスピスにぶつける手続きを設けてあります。
 ボランティアに対しては,自分の仕事を自分で改善してもらえるよう,1年に1回,自分の仕事を見直す機会も設けています。それは今のところ,各部門でのミーティングで行なっています。このミーティングの場で,ボランティアからは,自分の役割や,自分たちの仕事を行なっていく上での問題,今後解決するにはどのようにしたらいいのかについて,意見を出してもらっています。
 最後になりますが,ボランティアがホスピスの仕事を離れるときに,私どもは,ホスピスでのボランティア活動の感想を聞かせてもらっています。また,今後改善すべき問題点も参考のために聞かせてもらうようにしています。

 以上,セントオズワルドホスピスのボランティアプログラムの概要をお話しましたが,お役に立てれば幸いです。今までの私の経験からして,ボランティアの役割が慎重に計画されていること,訓練もサポートもきちんと受けてチームの一員に組み込まれていれば,ホスピスの仕事を手伝うやり方に,まず制約はありません。
 ありがとうございました。

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