No.9, p.2 2001年7月


院内講演会:英国セントオズワルドホスピスのスタッフをお迎えして
平成12(2000)年11月20日夜 並木ひろば

アンジェラ・エグデルさん(写真左)
 患者サービスマネジャー
デボラ・ヘロンさん(写真中央)
 人材開発部長
セントオズワルドホスピス(英国ニューカッスル市)

司会:横山 幸生
 かとう内科並木通り病院 ソーシャルワーカー
通訳:小笠原ヒロ子


講演2
緩和ケアにおけるチームアプローチ

Deborah Heron(デボラ・ヘロン)
英国セントオズワルドホスピス,人材開発部長


 私とアンジェラをこのホスピスに招待して下さり、ありがとうございます。また、セントオズワルドにおける私たちの経験をみなさんにお話できることをありがたく思います。本日は、緩和ケアを提供するにあたって、スタッフとボランティアたちが、チームとしてホスピスでの仕事を一緒にすることについて、新しい視点がもたらされればと思っております。
 本日は、セントオズワルド・ホスピスがボランティアをどのようにまとめているか、オリエンテーションとそれに続く教育、他の専門職や、患者さんとそのご家族とのつき合いについて話すようにということです。この話の最後には、質問の時間が用意されているので、ボランティアとみなさんの関わり方についてお話をうかがいたいと思っています。
 本日は、1、セントオズワルドにおけるボランティア・プログラムの成り立ちをざっとお話して、2、ボランティアになるという観点から、ボランティアとスタッフがどのように一緒に仕事をするか、また、ボランティアがチームの一員になれるように、私たちはどのようなお手伝いをしているかを説明し、3、ボランティアが引き受けている役割のいくつかを紹介するとともに、その役割の中で、ボランティアと、患者さんとご家族がどのようにつき合っているかをお話します。

セントオズワルド・ホスピスのボランティア・プログラム
 まず最初に、セントオズワルドでどのようにボランティア・プログラムを作り上げているかをご説明しようと思います。
 まず、プログラムの規模ですが、セントオズワルドには600人を超えるボランティアが登録されています。これは、私たちのデータベースに記録されている数ですが、この人たちは、通常メンバーとして仕事をしてもらっています。もう1つ、臨時に仕事をしてもらうグループがあります。これは、寄付金の募金活動を手伝ってくれます。この数を入れれば、私たちのホスピスで仕事を手伝ってくれるボランティアは、おそらく800人近くに上るでしょう。
 ボランティアは、セントオズワルドの全ての分野で働いています。入院病棟(ユニット)とデイサービスでは、直に患者さんに接しています。たとえば、食事や飲みものの給仕、運転手、チャプレン(司祭)と一緒に魂を支える仕事、離別ケアの一員としてご家族に接したり、介護者支援グループの一員などの仕事をしています。今日は、後で、もう少し具体的に、どんなことが行なわれているかをお話しようと思います。
 ボランティアは、ホスピスの他の分野でも手伝います。たとえば、事務所や調理場で、庭師として、いけ花の担当者として、建物の補修要員として、などです。寄付金の募金活動や、5つあるショップでの販売員としても手伝ってもらっています。たいていのボランティアは、1週間におよそ3時間手伝います。人によりもっと手伝う人もいますし、1週間に5日来る人もいます。定期的に手伝ってくれる人以外に、休日や、ボランティアが休んだ場合に手伝ってくれる人もおります。
 ボランティアは、全てチームに入って活動してもらいます。大多数は、スタッフのわきで仕事をして、スタッフの役割を補佐します。私たちは、これが、ボランティアを組み込み、彼らがホスピスの一員だと思える最善の方法のひとつだと思っています。
 私たちは、ボランティアが、スタッフのようにホスピスの仕事に関わり、自分たちの特質と能力を発揮して、指名された役割をこなせてチームの一員になれるようにすることも重要です。そのために、私たちは、全てのボランティアと面談し、問い合わせを行ないます。このことは、私たちがボランティアの参加をまじめに考えていて、その技能と才能を最大限に活用したいというメッセージをボランティアへ送るという効果もあります。
 ボランティアを受け入れたら、私たちは、ボランティアが適切なオリエンテーションと研修を受けられるようにします。研修には、ホスピスで働く人は誰でも受けることが法律的に義務付けられている法的な研修が含まれます。研修は、まず、健康と安全、火災発生時の患者さんの安全な移動に関連するものです。ボランティアはまた、オリエンテーションとして1回2時間で4回ある講義に出席しなければなりません。講義は、セントオズワルドの考え方、緩和ケア、離別、魂の問題、チームワークに関するものです。

チームへの合流
 講義も非常に重要な研修ですが、ボランティアに対するオリエンテーションの最も重要な部分は、おそらく、一緒に仕事をすることになるチームへの紹介という手続きです。
 従って、私たちは、早い時期に、ボランティアを、所属チームのスタッフとボランティアに紹介するようにしています。最近ボランティアから返ってきた反応から、ボランティアが、最初の数週間、自分たちの世話をしてくれるチーム出身のボランティア仲間が1人いてくれると助かることがわかり、私たちは現在、これを組織的に行なう方法を研究中です。
 チームの一員になるにあたって役に立つことが、もうひとつあります。それは、ボランティアが自分の役割と仕事の仕方を理解できるようにすることです。そのために、私たちのところでは、最初は、「かげ」になって、つまり、もう1人のボランティアの後に付いて、一緒に回るようにしてもらっています。これで、自分が完全に役割を引き受けるまでに自信をつけています。
 私たちはまた、同じ仕事をするボランティアのグループに対して、チームのミーティングを設けています。たとえば、ボランティアの運転手は、四半期ごとにチームリーダーとミーティングを行なっています。こうしたことで、仕事をする日が異なるボランティアに会えますし、関心を共有したり、輸送サービスの改善についての提案も行なえますし、研修で最新情報も得られます。

ボランティアのチーム・コーディネーター
 理想としては、ボランティア全員が各部署のスタッフから一部の仕事についてサポートを受けられたらいいと私たちは思っていますが、こうしたことは不可能なので、私たちは、ボランティアのチーム・コーディネーターという役割を考え出したのです。こうなったのには、理由があります。
 1、スタッフは、仕事量やボランティアの数からいって、いつもボランティアをサポートできる余裕があるとは限らないからです。たとえば、入院病棟には、食事や飲みものの給仕として登録されているボランティアは、100人おります。
 2、スタッフにとって最も時間がかかる仕事の一つが、シフトを全て埋められるだけのボランティアを確保するために、ボランティアの当番表を準備することです。
 3、仕事がびっしり詰まっているスタッフと、1週間に1回しか来ないボランティアを組み合わせると、コミュニケーションの問題が発生する可能性があるということが、私たちには分かっております。
 これらの問題を解決できるようにする人がボランティアのチーム・コーディネーターです。この人自身ボランティアで、何をするかと言いますと、
 1、スタッフへの仕事量を減らして、重要な任務が大いに行なえるように当番表を準備します。
 2、この人たちが、セントオズワルドホスピスとボランティアの間のコミュニケーション回路を提供します。たとえば、ボランティアのチーム・コーディネーターは、ボランティアの受付係に責任があるのですが、ボランティア全員に送付する月報を制作し、ホスピスで何が起きているかについて重要な最新情報を提供します。
 3、ボランティアのチーム・コーディネーターは、現場からの反応を伝えたり、ボランティアの意見や提案をホスピスへ伝えたりすることで、ボランティアの仕事ぶりを高める手伝いをします。

ボランティアの役割
 これとは別に、スタッフとボランティアの仕事上の関係を良好なものにするために、私たちは、ボランティアにやってもらっていることがあります。
 ボランティアには、
 1、スタッフを補佐してもらいますが、代役になってもらってはおりません。たとえば、病棟で飲みものや食事の給仕をしてもらうことで、看護婦が、他の患者さんへのケア(そのために訓練を受け資格を取ったのですから)が行なえるようになります。
 2、ボランティアの役割は、強制ではなく、スタッフとの合意により、考え出されます。もしもスタッフが、ボランティアに果たしてもらいたい役割が見つかった場合には、ボランティアにとってもっと有意義なものとなり、スタッフはボランティアの必要性をさらに自覚することになります。このやり方が採用されると、驚くべきことに、ボランティアの役割がたくさん見つかることになったのです。重要なことは、新しいさまざまな役割を慎重に計画し発展させることであり、その役割にぴったりのボランティアを採用することに特別の注意を払い、適切なトレーニングが行なわれることです。
 3、前に申し上げたように、私たちは、ボランティアを使えるようにスタッフを元気づけることが、いかに重要かがわかったのです。これによって、学習と、スタッフとボランティアの間の協力関係を向上させることができました。

ボランティアと,患者さんとその家族との関わり
 私たちは、ボランティアを、患者さんとその家族にどのように直接関わらせているかの具体例を取り上げることにしましょう。
◯ 入院病棟(ユニット)
 入院病棟には、次の役割のボランティアがいます。1、ボランティア補完療法士は、アロマセラピー、レフレクソロジー、マッサージの技能を持っています。2、調査ボランティアは、患者さんに対して満足度調査を行ない、定期的にレポートを作成します。レポートは、患者ケアのスタンダードを改善するのにホスピスが使います。3、ボランティア看護婦と助手は、基礎的なケアの仕事を行なうスタッフの看護婦に付いて仕事をします。4、病棟ヘルパーは、病棟で飲みものと食事の給仕をします。5、ボランティア理学療法士の5つです。
◯ デイサービス
 デイサービスには、次の役割のボランティアがいます。1、受付ボランティアは、アポイント(予約)のためにやって来た、患者さんを出迎えます。2、デイホスピス・ボランティアは、1日を過ごす患者さんに付き合うだけでなく実際に患者さんの手足となってサポートもします。3、デイホスピス創作活動ボランティアは、クラフト(工芸)の技能を持ち、デイホスピスにやってくる患者さんに対して、絵を描いたりカードを作ったりするといったクラフトをやってみてはどうですかと働きかけます。
◯ デイトリートメント
 デイトリートメントには、1、ボランティアのチーム・オーガナイザーが1名、2、患者さんと直に接するボランティア、3、デイトリートメントの事務を手伝うボランティアがいます。
◯ その他のボランティア
 ホスピスが、患者さんとその親類をサポートしている場合には、そのサポートを行なう役割のボランティアもいます。1、ボランティア理学療法士は、その資格を持った、かつてのスタッフの一員ですが、雇用契約を結んでいる理学療法士と一緒に仕事をします。2、チャプレン(司祭)・ボランティアは、私たちが1週間4回行なっている集会礼拝に一緒に行ったり、患者さんがスピリチュアルな次元で求めていることを話し合い、それをチャプレンに伝えたりします。3、離別ケア援助ボランティアは、私たちのソーシャルワーカーとともに行動し、先立たれた親類をサポートしたり、患者さんにカウンセリングの類いのサポートを行なったりします。4、移送業務は、雇用スタッフの監督の下に、ほとんどがボランティアの手で行なわれていて、患者さんの移送にあたります(ボランティアの運転手やマイクロバス運転手)。。

ボランティア看護婦など
 次に、患者さんのケアに直接貢献するボランティアの仕事や役割の範囲をざっと述べます。具体的に、ボランティア看護婦、病棟ヘルパー、デイトリートメント・ボランティアの3つの役割を取り上げます。
◯ ボランティア看護婦
 ボランティア看護婦は、スタッフの看護婦に付いて仕事をします。中には資格を持った人や退職した人もいますが、その他のボランティア看護婦は、子どもが小さくて、正規の勤めはしたくないが、看護の技能を使い続けていたい人たちです。ボランティア看護婦は、入浴・食事・排泄等の世話をしたり、患者さんのさまざまな要求に応じたり、患者さんと親しく交流するなど基本的な看護の仕事を行ないます。患者さんの申し送りミーティングにスタッフの看護婦と一緒に出席し、任務に就いている間は看護チームの一員として働きます。このグループの人数が少なくて、看護チームの一員として仕事をすることでボランティアのチーム・コーディネーターを置く必要がないためにコーディネーターがいない場合でも、定期的にサポート・ミーティングを持ちます。
◯ 病棟ヘルパー
 病棟ヘルパーは、この役割についてはすでに触れましたが、患者さんや親類に飲みものや食事の給仕を行なうボランティアです。病棟ヘルパーは、看護スタッフが、より緊急な医療の仕事にフリーハンドで集注できるようにするのが役目です。患者さんと、親交を深める時間が、他のボランティアよりあります。その必要性があるかどうかは、自分で判断するように言われています。このボランティアグループは大人数なので、ボランティアのチーム・コーディネーター1名を置いて、当番表を準備します。この任務を行なってくれるボランティアがいないと、看護婦がこの仕事をしなければならなくなり、他の任務ができなくなるので、病棟ヘルパーは重要な任務です。
 病棟ヘルパーは、担当の看護婦に対して責任を負っていますが、1日のうちで会う時間が限られているので、セントオズワルドでは病棟ヘルパー全員を対象としたミーティングを年3回設けています。これには看護スタッフとハウス・マネージャーも出席します。ミーティングでは、ボランティアが、仕事で気がついたことを言ったり、仕事のやり方についてスタッフからアドバイスを求めます。私たちは、ボランティアからの意見を検討する手続きを改め、ミーティングの時にボランティアの作業を見直すようにしました。問題が緊急に発生した場合には、ボランティアのチーム・コーディネーターを通して、その課題を上げられる機構もあります。
◯ デイトリートメント・ボランティア
 デイトリートメント・ボランティアは、主にリンパ浮腫の患者さんの仕事をするデイトリーメント看護婦に付いて仕事をします。このボランティアの役目は、患者さんを出迎え、親しく交流すること、患者の詳しい所見をとること、包帯を巻く手伝いをすること、四肢を測定することです。デイトリートメント・ボランティアには、ボランティアのチーム・コーディネーターが1名いて、定期的にミーティングを行なっています。このグループの規模は、病棟ヘルパーのグループよりは小さいのですが、スタッフとボランティアの協力関係が、セントオズワルドの中で最もうまくいっているケースのひとつです。スタッフとボランティアは、仕事をし、打ち解け、一緒になって、社会の人たちに向けて定期的に催しを行なっています。

結論
 セントオズワルドにおけるボランティアを参加させる方法を述べてきましたが、参考になりましたでしょうか。
 私たちは、ボランティアが、その役割が自分に合っていないと感じていたり替わりたいと望んでいる場合には、仕事を変わる便宜を図っているということも申し上げておくべきでしょう。現実的問題として、鍵になる分野で訓練を受け、経験を積んでいるスタッフよりも、ボランティアに、役割を替わったり引き受けてもらったりしてもらう方が容易なこともあり、私たちは、日頃から、ボランティアに柔軟であってもらいたいと働きかけています。これには、患者さんのニーズが変化したり新しく生まれたりしていることがわかったら、それについてのサービスが採用できるようにすることも加わります。
 ボランティアは「見ばえをよくするための飾り」、すなわち、ホスピスはボランティアがいなくてもやっていけるという意味で付け足しであると、時に言われます。セントオズワルドでは、ボランティアの貢献がなくてもホスピスのサービスを提供することも可能ですが、そうなった場合には、非常に異なる水準のサービスになるでしょうし、みんな、つまり、スタッフも、ボランティアも、そして最も重要で私たちの仕事の中心に位置する患者さんも、ある点でバラバラになってしまうと、私自身は見ています。
ありがとうございました。



質疑応答

司会 エグデルさん、ヘロンさん、ありがとうございました。ではこれから、質疑応答に入ります。質問する方は職種もおっしゃってください。

若い世代のホスピス経験の意義
(学生) 医療福祉の大学で学んでいる者です。日本では都市化や核家族化が進んで、家で同居している者の死に接する機会が、とくに私の世代では減ってきているように思われます。私はホスピスでボランティアをしており、患者さんの死を通じて生と向き合う機会をもつことができ、自分だけでは育てられない優しさを学させてもらっております。英国の若いホスピスボランティアの人の感想を聞かせていただけますか。
ヘロン 私たちのホスピスに来ているボランティアの一番若い方は16歳で、多くのボランティアが、患者さんと直に接する仕事をしています。その多くが、入院病棟で患者さんに飲みものや食事の給仕をしています。時には座って患者さんと話をすることもあります。
 英国の若い人の多くは、家族の死を直接経験することはありません。ホスピスにボランティアに来ることによって初めて、病気や、死んでゆく人を目のあたりにすることになります。そうした約2年間の仕事を終えて去っていく人たちを見て私が思うのは、ボランティアをすることによって、病気や死という人生の別の面をみる経験をし、大きく成長するということです。経験の種類としてはちょっと変わったものでしょうが、とにかくプラスの経験になっていると思います。ホスピスでのボランティアを辞めても、コミュニティでホスピスのことを話す機会もあって、そのメリットも計りしれません。
 それから、かなりの数の人が医学の勉強をするようになっています。そういう方はとくに、緩和医療、緩和ケアを早い段階で理解しているので、これもメリットだと思います。
 スタッフの多くもホスピスに来るまで、死とはほとんど縁がなかった人たちで、スタッフにもいい影響があります。私たち自身も、患者さんの死に接して影響を受け、変わっていき、それによって、自分たちの仕事にはこういういいところがある、特権があるんだと、ますます認識できるようになるわけです。
 それに肝心なことは、死と無縁な人はいないということです。若い人は、死は遠いもの、自分は死とは関係ないと思いがちですが、現実はそうではありません。だから、ホスピスでのボランティアの経験が、若い人の後の人生にとって有意義なものになると、私は確信しています。

「次の約束」について
(ボランティア) 日本のあるホスピスの婦長さんが書いた本の中で、ボランティアに守ってほしいことのひとつとして、患者さんはいつ急変するかわからないので、次回の約束をしないでほしいということがありました。あなたのホスピスでもそう考えておられるのでしょうか。
ヘロン 私たちセントオズワルドホスピスでは、そういう指示はしていないと思います。私たちのところでは、ボランティアのトレーニングの際に、患者さんの病気がどういうものかをしっかりと説明するようにしています。研修の中で、患者さんの容態は急に変わることもあると教えています。
(MSW) 今の質問に関連しますが、こういうケースがあります。次の週にも来ると約束したボランティアが、翌週来てみたら患者さんが亡くなっていて、ボランティアのみなさんの悲嘆が大きいものがあると思いますが、病院側として、同じチームの仲間として、どのようなフォローができるでしょうか。
ヘロン これも、チームの一員としてのボランティアのコミュニケーションの問題です。ボランティアの人が、ホスピスで一人の患者さん、あるいは一つのことしか行なわないということは、ふつうはないことです。ある患者さんの容態があまり良くないなら、看護婦はボランティアに伝えておくべきでしょう。つまり、翌週ボランティアの人が来て初めて患者さんの死を知ってびっくりするということがないよう、少しでも容態のことをチーム全員が知っておくようにしています。
 こちらのホスピスにもボランティアの運転手さんがいるそうですが、私たちのところで週1回ボランティアで来ている運転手さんが、ある患者さんの送迎の時間が長かったために、緊密な人間関係ができてしまったというケースがあります。そういう人へのサポートは、もちろんチームとしてするようにしていますが、スタッフについてもそうで、しっかりサポートするようにしています。
 とくにボランティアの人について言えば、患者さんが亡くなったことをとても悲しんで否定的に捉えて苦痛になるという人は、この仕事には向かないかもしれないとも考えます。もちろん、このことはスタッフについてもいえることで、ある患者さんの死が感情的にあまりにもつらくて新しい職場を探すという場合には、私たちもサポートするようにしています。
 しかし、私たちがホスピスにいる最終的な目的は、患者さんとご家族へのサポートであって、スタッフやボランティアへのサポートではないということです。本来果たすべき時間と努力が別の方向に注がれてしまうことは、決して望ましいことではありません。

離別ケアの実際について
(ボランティア) ご家族への離別ケアの援助について、私たちボランティアはどのように関わっていったらいいのか、いつも悩んでいます。英国のホスピスではどのように取り組んでいるのでしょうか。
エグデル それは、離別の様子によりますし、離別された患者さんと家族の状況にもよります。私たちセントオズワルドホスピスでは、離別ケアのサポートグループが2つあり、それぞれ役割をはっきり分けて持っています。1つは、年輩のご家族で配偶者を亡くされた方への離別ケアを行なうチームで、もう1つは、若い方で配偶者やご家族を亡くされた方、あるいはまだ幼いお子さんがいるご家族への離別ケアを行なうチームです。これは、対象となる方のニーズがまったく異なるからで、いっしょに対応していると決してうまく進めません。それぞれのチームには、離別ケアの専門トレーニングを受けたカウンセラーが中心となってメンバーを構成しています。
 具体的なサポートのプロセスは、最初のころは月2回のペースでご家族の方々に集まってもらうグループ会合をもち、離別して間もないため精神的に大変でしょうから、時間をたっぷり費やして、亡くなった方がどんな人だったのかの逸話や亡くなる直前の様子などを十分に話し合ってもらうようにします。「さびしい」とか「この先どうしていったらいいか不安だ」といった感情をグループ全員が共有できるようになると、お互いの絆が強まり、悲嘆がうすれていきます。そして、やがて月1回のペースにしていきます。12カ月経つと新しいグループと交代します。
 若い世代の方々のグループの場合は、怒りの感情が強く爆発することがあります。「どうして彼(彼女)が死ななければならなかったのか」あるいは「悲しんでいる子どもにどう対応したらしいのか、わからない」などの問題は大きく、これは個別にサポートしていかなければならない場合があります。これでお答えになったでしょうか。
 少し希望がもてました。ありがとうございました。

食事と栄養管理について
(管理栄養士) 昨日の歓迎レセプションで耳にしたのですが、セントオズワルドホスピスには栄養士はおらず、シェフがいらっしゃって、患者さんとコミュニケーションをとりながら食事のメニューを考えているとのことでした。私はシェフがいるとのことにびっくりしてしまったのですが、栄養管理についてはどうされているのでしょうか。それから、食べることができなくなった患者さんへの経管栄養の処置などはどうされているのでしょうか。
エグデル おっしゃられるように、セントオズワルドホスピスには栄養士はおりません。ただ、食事サービスを担当するスタッフは、栄養管理面でのトレーニングは受けています。例えば、ペースト状の栄養成分を食事素材としていかに食べやすく食欲をそそるようにするかなどの工夫は、このスタッフで行なうこともあります。
 もちろん、それだけでは十分ではないので、ホスピス外の管理栄養士と緊密に連携をとっています。2マイルほど離れたところにある病院に、経鼻、経腸など経管栄養面などでのサポートを依頼しているわけです。そのために、私たちのホスピスでは病院の栄養士にどのように関わってもらったらいいかの決まり(プロトコル)もきちんと開発・整備し、確立しています。

ボランティアのトレーニングについて
会場 英国のホスピスでは、法律で定められたボランティアのトレーニングがあるとのことでしたが、それについて教えてください。
ヘロン 法律で定められているのは、ボランティアに対してだけではなく、ホスピスに関わっている全員が受けなくてはならないもので、衛生、安全、消防などのトレーニングです。それには、患者さんに大きな負荷がかからないように楽な姿勢をとらせる方法などのトレーニングもありますが、日々の仕事に直接かかわるケアのトレーニングではありません。もちろん、私たちセントオズワルドホスピス独自のトレーニングプログラムもありますが、それも、ボランティアが自分の職務をいかによりよくやっていくかに関するものです。
 というのも、一般論として、ケアに直接関係するトレーニングはできないと考えています。これは、ボランティアの人の資質によるところが極めて大きいからです。
 しかし、コミュニケーションをより良くするためのトレーニングはできます。ボランティアの人がホスピスに初めて来たときに一番心配するのは、患者さんとどういうことを話したらいいのかということでしょうが、それについて私たちホスピスの方からは、こうするな、ああしなさいなどとは言いません。ホスピスとして頼むことは、ともかくも患者さんの話すことにしっかり耳を傾けてください、ということです。そして、時間をたっぷりとってゆっくり使ってください、ということです。
 もちろん、患者さんのうち、当面の死からは遠去かって容態がよくなった人で、なおサポートをしてもらいたいという患者さんには、それなりの資格をもった専門スタッフがあたるようにしています。
会場 わかりました。自分で勉強しなければならないということだと思いました。

コミュニケーションを円滑にするツール
(ボランティア) 私たちはホスピス内でときどきかんたんな新聞を発行していますが、セントオズワルドホスピスではどうでしょうか。
ヘロン こちらで発行されているのを見せていただき、こんなに立派なものをとびっくりしました(笑)。私たちのは、ボランティアで受付けをしているグループの人たちだけに向けた限られたニューズレターがあるだけです。なぜかというと、受付けグループは、患者さんやご家族、それに一般の方々に接する最先端にいるからで、私たちホスピスの最新情報を提供する役割があるからです。あっ、それからデイホスピスでも患者さん向けに簡単なニューズレターを発行してます。
 その他に、ホスピスの管理部門から年4回、これは本格的なニューズレターを発行しています。これは募金が本来の目的で、25万部ほど発行して郵送していますが、もちろん一般の方々へのホスピスのアピールとして非常に有効なものですし、私たちスタッフがボランティア募集のためのツールとしても使っています。

司会 それでは終了予定時刻が迫ってきましたので、最後に当院院長より締めくくりの挨拶があります。
加藤 エグデルさん、ヘロンさん、はるばる遠方からお越しいただき、到着早々の昨日今日と2日間にわたって、時差をものともせず、しかも今夜は遅くまでの講演をしていただき、ありがとうございました。お2人の来日講演が、私たちのホスピスにどれだけ大きく貢献することになるか、計りしれません。願わくば、私たちとのこの関係をこれからもずっと続けさせていただきたいと思います。
 さて会場のみなさま、今夜は遅くまでありがとうございました。私から話しておきたいことが2つあります。
 1つは、今回エグデルさんがお話してくれた看護部門のオーディット(自己監査)のことです。オーディットは世界的な流れです。私が昨年出席した香港でのWONCA(世界家庭医機構)アジア太平洋総会でも、また今年は台北で開かれる同総会でも、共にオーディットが大きなテーマになっています。しかし国内の医学・医療界からは、その言葉はほとんど聞こえてきません。また、緩和ケアでも同様のことがいえます。アジアの緩和ケアのあり方は日本とは違うかたちでうんと進んできています。私はこのままいくといつか、日本の緩和ケアのあり方がアジアに比べて遅れていくのではないかとの危惧を感じています。
 もう1つのお伝えしたいことは、ボランティアについてです。私どもがボランティアからどれだけ大きな恩恵を受けているかは言うまでもありませんが、今回、私たちがめざしてやっていること、すなわちボランティアもケアチームの一員であるという方向性は正しく、これをさらに推進していくためには、パーソナルマネージングを担うオーガナイザーとしての存在(人材開発部長)が必要なことがわかったということです。
 この方向で、私たちのコミュニティ全体が、国際性をもちながら、さらに1つのチームになっていくような活動を、これからも続けていきたいと考えています。みなさん、2001年はニューカッスルへ行きましょう。

〔エグデルさん、ヘロンさんを通じてセントオズワルドホスピスより当院に、英国ニューカッスル・アポン・タイン市の紋章入りプレート(飾皿)とケルト民族紋章デザインの文鎮が贈られました〕

注1 エグデルさん、ヘロンさんの平成12(2000)年11月19日の講演は、緩和医療研究会機関誌『緩和医療』第9巻第2号通巻第18号(平成13年4月発行)に掲載されています。
注2 平成13(2001)年6月11日から約10日間の予定で、当院のスタッフとボランティア有志の一行が英国セントオズワルドホスピスを訪問し、研修を受ける予定です。

◇◇◇
 今回のアンジェラ・エグデル氏、デボラ・ヘロン氏両名の来日費用および講演等の全ては、当院の患者様・ご家族の篤志より成る並木基金でまかなわれました。

Copyright 2005-2018 医療法人 社団 かとう内科並木通り診療所(岡山市南区並木町) Phone: 086-264-8855

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